宮本輝:「三十光年の星たち」(上・下)

今日は節分。新しい住まいに入って丁度2ヶ月が過ぎ、3ヶ月目に入った。相変わらず整理のできていないものが一部屋にまとめられたままになっている。必要に応じて開梱することにしているがアルバムや書籍が多いので滅多なことでは開ける所までは行かない。その前に諦めてしまうからだ。そしてそんな生活パターンが固定化してきた。先日始めて橋本駅に隣接しているMeWeという多目的ビルに入っている図書館に行き図書貸出券(カード)も作り、本やCDを借りたりして生活にも落ち着きが出てきたように思う。その落ち着き感をもっと実感したくなって図書館で手に取った本はやはり宮本輝の作品だった。この人の本には善人しかでてこない。教養小説のようで堅苦しいところがあるがそれだけに日常生活でハッと気付かさせられる点も多い。読んでいて気も休まる。人間生きていく上でこのような人間世界(社会)の存在があると思うとフィクションではあるが救われるような気分になる。逆境にあっても頑張っている人や自分では一生懸命であっても何か的外れであったり、空回りであったりして苦しんでいる人にも必ずそれを理解し、応援してくれる人が現れる。そんな世界を描き出してくれる。この本でも、二人の老人が「何かの不運の中ででも、一生懸命頑張っている人(主として女性)」を応援して個人的にお金を貸す貸金業を営んでいてその二人にお金を借りた一人の青年、30歳の坪木仁志がその二人の老人たち(75歳)に鍛えられ、一人前の人間に成長していく物語だ。30年、100年後の姿を夢見て頑張る姿を描いている。それは、自然の照葉樹の森が100年後に出来上がる、のを想定して植樹を進める植物学者とそれに共鳴して工場の周りをそうした森で囲ませようとする経営者、その植樹を手伝う従業員、そこに偶然お金を貸した人がいて、その縁で植樹作業を手伝うハメになる坪木仁志。そういう切っ掛けから仁志はその二人の老人の貸金業を引き継いで、その中から人間を知り、学び、成長していく。なぜ頑張る女性に資金援助をして応援するのか!戦後男が戦地から帰ってこない中で歯を食いしばって元気に切り抜けていった多くの女性を見てきてこういう人を応援する資金を使えるようになりたいと考えたというのだ。自分がこの本の老人役であり、30歳の坪木は自分の息子達に置き換えて読んでしまった。そして後書きによると宮本輝はこの本を芥川賞を受賞してから30年をケジメにして総決算のような本を書きたいと考えて執筆したという。一つ事を30年愚直にやり続けて初めて物が見えてくるといいたいのだろうか。75歳の佐伯老人は宮本輝と重なる。


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