野上 卓:歌集「レプリカの鯨」

サラリーマン川柳かとも思う。似たような時代を生きてきた自分にもぐっとくるような歌の数々。印象に残ったもののいくつかを紹介する。
○ 職退けるのちも仕事の夢を見るたぶん死ぬまで折々に見ん
○ 平穏に退きたる過ぎ行きに解雇を告げし痛みもありぬ
○ 気に入らぬ上司はいづれ去りゆくと言いし吾らも退職をせり
○ わたくしが生まれた年がはやばやと歴史のように語られている
○ 寝ていれば指でつつかれ起こされた生きているのか確かめられた
○ 「この国」と吾が祖国さえ呼び棄つる気分になりしこの頃のこと
○ 交番にぼんやり巡査が立っている古びた街に住みたいと思う
○ 加齢によるものであるから心配するなというがそれが問題
○ わたくしの財布の厚み病院の診察券のたまりたるゆえ
○ 年寄りが偉かったのは昔ですだって私が年寄りですし
○ 階段の手すりを今は頼りにす新築時には笑いしものを
○ 歳々に花を見るため生きているような気になる三月半ば
○ 中空にとどまるよう蜂が滑るように消えて真白き夏道つづく
○ 七月の豪雨やまぬこの三日ゴーヤはすでに深く根を張る

このたびの西日本豪雨の災害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。

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