朝井リョウ:「何者」(なにもの)

2013年度直木賞作品。就活の日々、ある意味で同級生がライバルに変わる曲がり角の時期、未知の道筋をお互いどう乗り切ろうとしているのか知りたくて知りたくてたまらなくなるそんな不安な日々を「ともに戦う同志」とすることによって乗り切ろうと仲間になっていく。情報交換、教わったノウハウを参考にしながらもう一方ではSNSを使って何者かになりすまして情報を吐き出していく若者たちのこれが実態!なのでしょうか?新しいIT時代の就職活動を迎える大学生たちの生態を描いていて結構説得力があった。ES(エントリーシート)というものを提出し、それに基づいて行われる面接を重ねて就活というものが進んでいくんだ。理系にはこんなことはないのだろうが文系はこうらしい。そんなスタイルに抵抗して就活から背を向ける人、表面上は無関心を装いながら必死に就活に励む仲間、次々と内定を獲得していく仲間、ここまでスタイルが完成してくるとこのような形式で新入社員を選択していくという手順そのものが形式化しすぎて、もうこういうシステムも使命を終えて新たな形態に行くのだろうという気もしてくる。就活がうまく行かなくて留年を重ねていく主人公が型通りのESを提出しながら、同じように内定の取れない仲間に評論家気取りの自分を糾弾されて、不思議に自分に素直な受け答えをしている自分に驚きながらも自己肯定的になっていく心の流れが最後の救いになっている。面接という関門を回を重ねて経験していく中で次第にマニュアル化された自分ではなく、本気になって「いったい自分は何者?」と自分を見つめ直していく。何者は掛詞でもあったのだ。これこそ現代を生きる生の青春小説。

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